米国サンフランシスコから、現地時間の2020年2月4日(火)早朝にSNSにアップした記事です。期日傍聴のための渡航費用の一部を支援してくださったJUCONのブログに、現地での活動報告も兼ねて転載いたします。(文責:三石朱美)
★拡散歓迎です!★
2020年2月3日、米国時間の午前9時から連邦高等裁判所(9th Circuit)に係属中の沖縄ジュゴン訴訟の口頭弁論が開かれました。私は、渡航費用の一部をJUCON(Japan US Citizens for OKINAWA)にサポートいただき、参加しました。
昨日、取り急ぎアップした写真と重なるものもありますが、たくさんの皆さんに雰囲気を知ってもらいたいので、それも含めて報告します。ぜひ、見てください☆
米国で2003年に始まったジュゴン訴訟。とても長い訴訟になっていますが、今回は、2度目の控訴審です。
米国のNational Historic Preservation Actでは、アメリカ政府が重要な文化財を保護する際には関係者ときちんとした協議手続き(Take into Account)を行わなければならない、という定めがあります。
そして、これまでの裁判の中で、沖縄のジュゴンは米国にとっても重要な文化財なのだ、ということが確認されています。こうした中、国防総省は一方的に「協議手続き、やりました」と言って、基地建設を進めていることがおかしい、ということが今回、私たちが訴えたことです。
約2週間ほど前に、突然、「訴訟期日が2月3日に決まりましたので、来てください」という裁判所からの連絡があり、いそいで調整をしたのですが、今回は沖縄の個人として原告になっている東恩納琢磨さんと一緒に、私も日本の原告団体JELF(Japan Environmental Lawyers for Future)のスタッフとして、参加することになりました。琢磨さんと私は、米国の原告団体Center for Biological DiversityのPeterさん、日本から参加された、もう提訴時からずっとジュゴン訴訟を応援しているSave the Dugong Campaign Center(SDCC)の蜷川さんと一緒に裁判所に向かい、法廷に入りました。
控訴審では前回傍聴した地裁とは異なり、各事件ごとに控訴人・被控訴人のそれぞれの弁護士に持ち時間が指定されていて、両者同じだけの時間を使って、それぞれが裁判官の質問をうけながら主張を行います。そして、原告、被告とも裁判官の質問をうけて発言できる弁護士は一人だけなのだそうです。
私たちの裁判は予定されている6件のうちの5番目(つまり2時間弱待って、私たちの期日です)。私たちより早く弁論が終わった人たちが傍聴席を退出するたびに、この事件に関心を持つ米国市民の皆さんが交代で席を埋め、気がついたら、90人近く座れる傍聴席は、社会科見学に来ていた地域の子供たち25名ぐらいのほかは、私たちの仲間で部屋中いっぱいになっていました。
さて、今回の私たちの代理人として裁判官の質問に答えてくれたのはEarthjusticeのダニー弁護士。前回の控訴審での勝訴判決以後、差し戻し審の過程で膨大な書面を分析しつくしてこの裁判を支えてくれた方です。裁判官が事件名を読み上げると、これまで訴訟を支えてくれたサラ弁護士と2人が席に座り、まずはダニー弁護士が裁判官の質問を受けながら、控訴審で主張したいことを述べていきます。
特に、国防総省が終わったと一方的に主張する協議手続きがどんな点でいい加減だったか、ということを丁寧に述べていました。
こちらの持ち時間がすぎると次は国防総省の弁護士側の陳述です。DoDはアセスとかは日本がおこなったから問題ない、とアピールしていましたが、私からみると、米国も基地建設に関する当事者なのに、その責任を放棄しているようにしか思えません。米国は米国独自に自分ごととして、きちんと関係者の聞き取りをしたり、ジュゴンに配慮して建設を止めるように働きかけたりしないといけないのではないでしょうか。
また私たちは、文化的側面での影響などについての調査が非常に不十分ではないか、ということも主張しました。
前回の2時間半ちかくかかった地裁の弁論と比べるとあっという間に感じましたが、これまでに原告、被告、双方から出した書面を3人の裁判官が確認された後にこうした弁論が開かれ、そして判決が言い渡される、というのがアメリカの手続きなのだそうです。
判決日の言い渡しもなく、あとで聞いてみると、裁判官が判決を書きおえたら、電子送付、という形で、突然、双方の弁護士に送られてくるのだそう。
通常、地裁より判決が出るのは時間がかかるらしいのですが、送られてくるのがいつになるのかについては、事件によっても違うので、ほとんど予測できないらしいです。
主張を丁寧におこなってくれたダニー弁護士、サラ弁護士にお礼を言いながら裁判所の建物を出たら、沖縄出身の日系アメリカ人の皆さんや米国の原告団体であるTurtle Island Restration Networkの皆さんが準備してくれた集会(Rally)が開かれていました。
ドアを開けた瞬間に、晴天の街に響く三線の音とジュゴン、そして皆さんがそれぞれにメッセージを書いて持ち寄ったバナーやプラカードなどが目に入り、私も琢磨さんも皆も大感激。
アメリカの市民として沖縄での基地の拡張は許されないということ、沖縄出身の日系人として、ルーツである文化、自然が壊されることを見過ごしていられないということ、人々が美しい自然を保ち、尊重しながら、平和を保つ努力をしつづけるべきであること。皆さんが交代で短いスピーチをしながら、時にジュゴンを守ろう!と声を上げています。
おもしろかったのが、法廷で私たちの陳述を聞いていた次に陳述を控えていた弁護士の方が、集会で着ぐるみのジュゴンと琢磨さんが手にしていた沖縄のジュゴンが辺野古沖でウミガメと泳いでいた写真を見て「これがジュゴン?陳述聞いていたよ、ジュゴンってかわいい動物なんだね。がんばって」とわざわざ声をかけに来てくれたことです。
たまたま社会科見学に来ていた子供たちの中にも、ジュゴンや沖縄に興味を持ってくれる子がいたらいいな、なんて思いながら、応援ありがとう、とお話ししました。
琢磨さんは、集会の最後に「基地の計画がでてきたはじめは、日本でもほとんど関心がなかった。だけれど今、沖縄ジュゴン訴訟は世界中の人が知っていて、沖縄だけでなく、日本でも、アメリカでもたくさんの人が応援してくれるまでになった。それは、ともに闘い、支援してくれる皆のつながりがあってこそです。勝利の方程式は、勝つまであきらめないこと。一緒に頑張りましょう」とスピーチをされていました。
集会の後は、集会や傍聴に参加したみなさんととても楽しい昼食をとって、私たちは代理人のearthjusticeの事務所に移動し、改めて裁判の説明をうけました。
期日の準備をおそらく徹夜をかさねてされてきたダニー弁護士は、何度も何度も琢磨さんに「琢磨さんがここまで出されてきた陳述書、琢磨さんや現場の皆さんが、長くこの裁判を支えてこられた経緯や、沖縄から届くデータ、また現場で戦う皆さんの運動があってこそ、今日の期日がむかえられた」とお礼をおっしゃっていました。
このあと、どういうタイミングで動くのかは、まったくわかりませんが、日本政府だけでなく、米国政府がしていることはおかしいのだ、直ちにやめないといけないんだ、という当たり前の気持ちが、多くの米国の方がたと共有でき、そして皆さんの思いはサンフランシスコに来るたびに拡がって大きくなっていることを、改めて実感した今回の期日でした。
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